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第525話

希は擽ったそうに笑いながら 「仰せの通りに…俺の大事な奥様…愛してるよ。」 「『愛してる』って言ったら、全てが許されると思うなよ!」 「だってぇ…愛してるんだもん、仕方ないじゃないか。 斗真は俺のもの、俺は斗真のもの。 …さぁ、機嫌を直して…ね?」 俺の首の周りに、小さな圧迫感を感じていた。 「まさか、お前…キスマーク付けてんじゃねーだろうな…」 「えへっ、バレた?」 『バレた』じゃねーって!! 「シャツ!シャツから見えたらどーすんだよっ! ばかっ!こんなの見えたらマズいだろっ!」 「大丈夫だって。ギリギリ見えないとこに付けてるから… 絆創膏貼ってる方がヤラシイじゃん!」 何で…何で自信を持ってそんなに言い切れる? 「周りはみんな、俺達のこと知ってるんだぞ? 明らかに『受』(と思われている)の俺が、首筋にこんなヤラシい跡を付けてたら、みんなに『あぁ…ヤったな…』なーんて、要らぬ妄想されたらどうするんだよっ! ほんっとに…デリカシーなさ過ぎ! 触るな! …めっちゃ頭にきた! 離れろっ!」 「何でそんなに怒るんだよ! 『見えない』って言ってるじゃないか! そんなことで一々目くじら立てるなよ! 夫夫なんだから、当たり前だろ!?」 「その『当たり前』は人前では隠す物だ! お前には、恥じらいというものがないのか!?」 「愛し合ってるのに、何故隠さなくちゃいけないんだ? 社内でも社外でも、周知の事実だ! …斗真は俺との関係を恥ずかしいと思ってるのか?」 一つトーンが落ちた声音。 激昂していた気持ちが瞬時に凪いだ。

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