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第526話
「恥ずかしいなんて、思ったことねーよ、ばーか。
そんなこと思うくらいなら一緒にいないし、結婚もしない。
こうやって…肌を晒すことなんて、しない。
…愛してる…って、言ってるだろ?」
ぼそぼそと話すが、浴室の中は声が響いて、一字一句希にははっきりと聞こえているはずだ。
赤く染まる肌は、温まったせいか、それとも、照れのせいか。
希が俺をぎゅっと抱きしめた。
「…ありがと、斗真…やっぱお前、最高の嫁だ…」
「………熱い…逆上せる……上がるぞ。」
照れ隠しにザブリと湯から上がりドアを開けると、すかさずついて来ようとする希を制して、一人でバスタオルを羽織った。
鏡に映るのは、潤んだ瞳の上気した顔。
完全に雌の顔だ。
「誰がこんな顔に変えたんだよ。」
独りごち、頸や首回りを確認する。
確かに希が言うように、ギリギリのラインで隠れそうだ。
薄っすらと残された赤い印…それらを見ていると、先程までの交わりを思い出して、身悶えしそうになった。
慌てて髪の毛をタオルで拭き、ドライヤーを当てて乾かしてから、汗が引くまで…と首からタオルを巻き、下着とスウェットのズボンだけを身に付けてリビングへ戻った。
ペットボトルの水を半分だけ飲み干す。
俺は…希に抱かれることを後悔なんかしていない。
女のような扱いをされても、それでいいと思っている。
立場を逆転させて、俺が希を抱く…今となってはそれはもう、どうでもいいことだ。
希によって俺の身体は作り変えられたんだから。
もう、希しか愛せない。
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