527 / 1000

第527話

それから… 尋常でない暑さの夏がやっと終わりを告げ、秋らしくない秋を迎えた。 いつもならこの時期にはお目見えするこたつ布団も、まだクローゼットに片付けたまま。 いくら暖かいとは言え、朝晩はやはり冷えてきた。今度の休みにはそろそろ準備しなければ。 秋晴れの過ごし易い日が続いたかと思えば、雨の日が続く。 こうやって、ひと雨ひと雨、寒さに近づいていくんだろう。 去年と違うのは…愛する者の温もりがあるということ。 全く思いもしなかった展開に、まだ時々夢じゃないかと思う時がある。 夢じゃないのは、すっかり肌に馴染んだ温もりが教えてくれる。 子犬のように纏わりつく希をやんわりと かわしつつ、時々これでもかと言うくらいに甘やかし甘えて… 忙し過ぎてすれ違いの日はあるものの、『行ってきます』と『お休み』のキスとハグは絶対に欠かさず… 休みの日には“スローなやつ”をじっくりと楽しんでいる。 そうやって、俺達は相変わらずの日々を過ごしていた。 一仕事終え、やっと明日から三連休。 “のんびりまったり”を希が期待する夜、突然大嵐がやってきた。 少し豪勢な夕食を済ませ、ワクワク感を隠そうともしない希が風呂に入っていると、チャイムの音が鳴った。 こんな時間に誰だ? 不審に思いながら、インターホンの画面を見ると…亜美さん!? 「亜美さん、どうしたの?俊兄は?一人?」 「…斗真君、ごめん…」 「とにかく入って!」 不審に思いながらもロックを解除して招き入れた。 風呂から上がったばかりの希も怪訝な顔をしている。 「亜美さん?今頃何で?」 「わからない。とにかく上がってもらうね。」 「わかった。」 希も慌てて着替えに行った。

ともだちにシェアしよう!