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第528話
ピンポーン
玄関のチャイムが鳴り、急いで鍵を開ける。
目の前には、大きなスーツケースを横に、腫れぼったい目の義姉が立っていた。
「さ、とにかく中へ!」
「…ありがと。」
きちんと靴を揃えて入ってきた義姉からスーツケースを受け取って、ソファーへ掛けるように促した。
「こんな遅くに…明日からお休みでゆっくりしてたでしょうに、ごめんなさい。」
「一体、どうしたの?何で一人?
それに…その荷物、どうしたの?」
「………俊と大喧嘩しちゃって…家を飛び出したはいいんだけど…ホテルに泊まろうとしたんだけど、連休前でどこも満室で…
斗真君と希君思い出して………ごめん、来ちゃった。」
「原因何ですか?いつもあんなに仲良しなのに。
ひょっとして、黙って出てきたんですか?
俊兄、心配してますよ。」
「お義父さんとお義母さんには言ってきたわ。
子供達の事頼まなきゃならなかったし。
原因?……あの分からず屋っ!!」
亜美さんは大声で叫ぶと、わんわん大号泣し始めた。
オロオロする俺に、希はそっと耳打ちしてきた。
「俺、俊兄に電話してくるから、お前は亜美さんに付いてろ。
ティッシュとタオル渡して、思う存分泣かせてあげて。」
「了解!…ごめんな、希…」
「こうなったら仕方がない…ちょっと聞いてみるよ。」
希は携帯を持って、そっと寝室へ入って行った。
俺は希に言われた通り、ティッシュとタオルを手に、亜美さんの向かい側に座った。
そして、泣きじゃくる亜美さんの前に、それらを差し出すと
「…ゔえっ…ひいっく…ありが…ゔえっ、と…
ごべんなざい…ひいっく…」
うわぁ…化粧も取れてドロドロじゃん…
ツケマもなくなってるよ…
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