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第533話

希が力強く頷いた。 「もちろん!だから、とことん話すといいよ。」 「ありがとう!…じゃあ、お願いするわね。」 ピンポーン 俊兄が玄関まで辿り着いたようだ。 「斗真、希、ごめんな…こんなことに巻き込んで… 亜美っ!何でこんな勝手なこと」 「はい、ストップ! 俊兄…とにかくこっち来て座って! 亜美さんが家出した原因、わかってるんだろ? 俺達のことは気にしなくていいから、もう、今日はとことん話し合ってよ。 落ち着いて、亜美さんの気持ちを聞いてあげて。 俊兄の気持ちも、ちゃんと伝えてあげて。 そうでないと、すれ違ったままだよ。」 俺は俊兄に訴えた。 黙って聞いていた俊兄は 「勝手なことしやがって」とボソリと一言だけ呟くと、ドッカとソファーに腰掛けた。 それを見て一安心した俺は、コーヒーの準備をしにキッチンへ向かった。 「それで? 何度も言ってるけど、何でダメなの? 俺は最低でももう一人はほしい。 本当はもっと…五人はほしいのが本音だけど… 俺達が三人兄弟で育ったから、どうしてもその環境がいいなってずっと思ってて。 亜美の負担になるのはわかってるんだ。 身体も、精神的にも。 ましてや、二番目のヒロの時には帝王切開だったから、その大変さも目の当たりにしてわかってるつもりだ。 産後の肥立ちが悪くて、2カ月以上寝たきりだったもんな。 …あの時は、ずっとこのままだったらどうしようって、氏神さんに毎日お願いに行ってたんだ。 あ…今でもそれは欠かしてない。」 「嘘…俊が?全然知らなかった…」 亜美さんがびっくりして、思わず呟いた。

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