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第535話
「でも、俊兄…余計なこと言うけど、ごめん。
ちょっと言わせて。黙って聞いて。
…氏神様にお願いはいいけど…目に見えないことだけじゃなくって、現実に…実際問題どうすんの?
ゴリ押しはダメだよ。
子供ひとりでも、ものすごいエネルギー使うんだ。それが三倍になるんだよ?
俊兄、仕事が忙しいのは分かるけど、何もかも亜美さんに丸投げなんじゃないのか?
子育ては夫婦でするもんだろ?
『子供がほしい』って…その子供達のことをどれだけ分かってるの?
ただ『ほしいから』なんて思いだけじゃ、ペットを飼うのと訳が違うんだからね!?
…駿のクラスの担任の名前言える?
よく遊びに来る仲のいい友達の名前は?
将来何になりたいか知ってる?
…ヒロが今ハマってるヒーロー戦隊、何色が好きか言える?
好きな子の名前は?
気に入ってる園庭の遊具は?
それに…亜美さんの身体に負担が掛かるのを知ってて言ってるんだろ?
それに対するフォローなんか考えてる訳?
お袋達をアテになんかするなよ!」
一気に捲し立てて、大きく息を吐いた。
俺の剣幕に、三人とも黙って聞いていた。
亜美さんは、ぼそりと呟いた。
「それ言いたかったの…ありがと、斗真君。」
俊兄は…眉間に皺を寄せて黙って聞いていたが、やがて口を開いた。
「…今まで、亜美にばかり家のことを押し付けてきて悪かった。
言い訳になるけど、俺は俺なりにしっかり稼いで、不自由のない生活をさせてやろうと、それが男の甲斐性だと思ってた。
どこかに『女だから家を守るのは当たり前』って考えがあったんだと思う。
最近、同僚や友人とプライベートなことを話す機会が増えてさ、聞いてたら俺以外はみんな、家事に協力してたんだ。」
そう言って、ふう…と大きく息を吐いた。
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