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第540話

痛ってぇーーっ!」 兄貴に殴られた… 「痛いじゃん!殴らなくてもいいじゃん!」 俺は希の胸に擦り付いて、嘘泣きしてやった。 「俊兄!酷いよ!斗真何にもしてないじゃん! 斗真、よしよし。大丈夫か?」 希が俺の頭を撫でてくれる。 それだけで、じんじんとした痛みが消えていく気がする。 ちろん と涙目で見上げて「大丈夫」と呟いた。 俺達の様子を見ていた俊兄は 「…安定のバカップルだな。ご馳走様。 仲良くしてるみたいで安心したよ。 でも…俺だって亜美のためなら何でもできるのさ。 いろいろサンキュー。 真剣に俺の思いを伝えてわかってもらうよ。 じゃあ、お休み。」 「「お休みー!」」 俊兄は亜美さんが待つ寝室へとスキップしながら行ってしまった。 くっつき合っていた俺達は、見つめ合い、はあっ…とため息をついた。 「ごめんね、希。」 「何で謝る?」 「だって……」 「ほら、そんな顔しない。俺は迷惑だなんて思ってない。 ただ……」 「『ただ』???」 「ただ…お前とのイチャイチャタイムが減ったことが不満だな。 今夜は抱き潰すくらいにヤろうと思ってたのに。」 「なっ!何言ってんだよっ! イチャイチャはするけど、潰すの反対!」 ちっ と舌打ちした希が、キッチンに消えた。 そして、ワインとグラスと皿に何か乗せて戻ってきた。 「あっちで飲もうぜ。」 くいっ と顎で寝室を指すと、スタスタ行ってしまった。 慌てて後を追い掛けようとして、耳を澄ましてみた。 何も聞こえない。 取り敢えず…後は当人同士の問題だ。 放っておこう…

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