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第544話

舌先から全身が、じわじわと痺れてくる。 まともに息の出来ない俺は、希にガッチリと顎を掴まれたまま、あふあふと、呼吸を繰り返す。 半開きの口からは、粘着質の透明な液体が零れ落ちていく。 「蕩けちゃって…かわいい、斗真。 そんな顔…他の誰かに見せたらお仕置きだからね。」 お仕置きって何だよ、お仕置きって。 何度も言うけど、俺は『かわいく』はない。 断言する。 お前の目が悪いに決まってる。視力いくつだ? こんなガタイのデカい男を捕まえて『かわいい』だと? 目の前の男は、デレデレに溶けている。 イケメン崩壊。 世の中の女が見たら泣くぞ。 でもまあ、仕方ないか。 俺のオトコだし。 「希、愛してるよ。」 真顔でそう言うと、希は一瞬びっくりした顔をしたが、崩れた顔を戻して(おおっ、イケメン復活!) 「そんなかわいいこと言うと…一晩中啼かしちゃうぞ。 斗真…愛してるよ。」 あー…もう、『愛してる』の応酬。 『“愛してる”言い合い合戦』か!? てか、今さらっと恐ろしいこと言わなかったか? 『一晩中啼かしちゃうぞ』 うひぃーーーっ! 止めろ、止めてくれっ! それはNGだ。 だって、声聞こえる! 亜美さんの声、聞こえてるじゃん! あたふたする俺に構うことなく、希がまた、俺にキスしようとしたその時… 断続的な喘ぎ声が、今度ははっきりと聞こえてしまった。 かあっと頬を染める俺に 「負けるもんか。 …斗真、聞かせてやれよ。俺達の愛を。」 いやいやいや、おかしいよね、それ。 「嫌だよ。 何でそこで対抗しなきゃならないんだ? そんな抱かれ方は…嫌だ…」

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