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第553話

朝食を済ませ、コーヒーを飲んで一服した俊兄と亜美さんは、仲良く手を繋いで帰って行った。 一気に脱力感に襲われた。 「はぁーっ…何だったんだろうな、あれ…」 「我が兄ながら、情けない…ごめん、希。」 「いや、いいけど… “夫婦喧嘩は犬も食わぬ”っていうのを実感した。 あーぁあ…俺達何だったんだろ…」 とにかくゆっくりしたい。 落ちたテンションを戻したい。 「…希…俺、もう少し寝るわ… 何か変にメンタルやられた…」 希にそう言い残し、寝室に戻って布団に潜り込んだ。 ぱたぱたぱた バタン …希だ… しゅるりと俺の横に潜り込んできた希は、俺を抱きしめ、ボタンを外し始めた。 「おい、何してる?」 「斗真と抱き合いたい。だから脱がせてる。」 「俺は眠りたいんだ。今はちょっと寝かせてくれ。」 「やだよ!約束したもん!」 「…俺、朝早くから中途半端にお前に起こされて、超絶眠いんだ。 …寝かせろ。」 むうっ と膨れた希は 「じゃあ、俺も寝る!」 そう言うや否や、あれよあれよと言う間に俺の服を脱がせ、自分の服も脱ぎ捨てると、俺を抱きしめてきた。 「…希…俺は」 「分かってる!でも、夕べから俺はずっと我慢してるんだよ? …斗真とのイチャイチャ楽しみにしてたのに… こうやって触れるのだって、遠慮してたんだよ…」 そうだった。 突然の珍客によって、それも阻まれたんだ。 あっちのイチャイチャをたっぷりと聞かされ見せつけられると言うオマケ付きで。 ふぅ とため息を吐いて 「…分かってるから…でも、ごめん。 頼むから今は一時間だけ寝させて。」 希は黙ったまま俺をぎゅっと抱きしめ額にキスをした。 了解ってことだな。 希…ごめん… 俺はそっと瞼を閉じた。

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