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第556話

ソファーでクッションを抱えて、手持ち無沙汰で待つ希に 「もう少しだけ…待ってて。」 と頬にキスを残してバスルームへ向かう。 それだけで俺の気持ちは分かってくれるはず。 急いでシャワーを浴びて、繋がる準備をしてからリビングに戻った。 あれ…希の姿がない。 さっきまでここでクッションを抱きしめて待っていたのに。 何処に行ったんだろう。 …寝室か? あぁ、ドアに隙間が空いてる。 待ち切れずにベッドで悶えてるのかもな。 くくっ と声に出そうな笑いを喉で押さえて、寝室へ向かった。 「希?」 一歩入った部屋はカーテンが閉められ、ほんの少し緩みのできた、合わせの隙間から柔らかな日差しが一筋差し込んでいる。 上半身裸で、腰から下を布団で隠してベッドに横たわり、片肘を付いた希が待っていた。 「…斗真、早くおいで。」 雄の色気を漂わせた猛獣が、そこにいた。 喰い尽くされる。 この男に。 そのオーラに思わず後退りしそうになりながらも、覚悟を決めて後ろ手でドアを閉めた。 そして、ゆっくりと近付いていく。 伸ばされた手を握ると、ぐいっと引っ張られて倒れこみ、二人分の体重を受け止めたベッドのスプリングが、ギシギシと鳴った。 希に抱きとめられ 「…もう…危ないじゃないか。」 と(たしな)めると、ごめん、と言いながら顔中にキスされる。 そんなもんで誤魔化すなよ…と顔を背けるが、両頬を押さえられ、バードキスの嵐が過ぎ去るのを待つ。 次第に犯されていく唇は、希を拒むこともせずに、少し開いた隙間から熱い舌を受け入れていた。

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