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第560話
目まぐるしく巡る思考は、目眩を呼んできた。
ぐらりとフラついた身体を何とか冷蔵庫で支えて、目を瞑り落ち着くまでじっとしていた。
動けるかな。
一人で出ていかなくちゃならないのに。
荷物だって纏めなきゃならないのに。
また、じわりと涙が滲んできた。
突然、ふわりと身体が浮いた。
?????
「の、希?」
「しばらく横になってろ。
…何もしない。手は出さないから。」
「降ろしてくれ!もう大丈夫だからっ!」
「そんな青い顔して、何が大丈夫だよっ!
言うこと聞いてくれ!」
「嫌だ!降ろして!」
言い合いをしている間にベッドに連れて行かれた。
…いつも俺達が寝ている…さっきまで睦み合っていた部屋へ…
壊れ物みたいにそっと横たえられ、布団を掛けられた。
「気持ち悪くなったら呼んで。」
そう言って頭を撫でると、希は出て行ってしまった。
起きなくちゃ。
気持ちとは裏腹に、身体がピクリとも動かない。
気は焦っているのに、希の匂いで一杯のこの場所から動くことができなくなっていた。
心と身体に染み付いた、希への依存。
もう、希なしではいられなくなっている。
どうしよう。
離れるなんてできない。
別れるなんて…できない。
希の存在の大きさを思い知らされる。
くっ…くうっ…くっ…
噛み締めても噛み締めても、嗚咽は漏れ、涙は枕に吸い込まれていく。
俺は泣きながら、いつしかフェードアウトしてしまった。
突然パチリと目が開いた。
ここ…俺達の寝室…一体何時だ?
出ていくつもりだったのに…
起き上がって、急に空腹感を覚えた。
そうだ…思いっ切り吐いて、出て行こうと思ったのに行けなくて、寝落ちしたんだ。
そっとドアを開けると、ソファーに座っていた希が振り向いた。
「斗真っ!!」
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