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第588話

クリスマスが過ぎると一気に慌ただしくなってくる。 本社に倣って、超大型の年末年始休暇を取るうちの会社は、いつにも増して大忙しの大騒動を起こしている。 「何かあったら電話を掛けてくれ。 一応繋がるようにはしておくが…時間差があることは許してくれよ。 では諸君、よいお年を!Ciao!」 ボスに至っては…俺達を残し、有休を駆使してサッサと伴侶の元へ行ってしまっている。 邪魔をするつもりは一切ないが、“何かあったら”秘書殿が泣くぞ。 俺達も渡米に向けて、怒涛の如く仕事をこなし、明後日からの休暇に備えて準備万端整えていた。 「おい、斗真。 荷物の整理、大丈夫なんだろうな。」 「んー…今日帰ったら最終チェックするけど… 子供じゃないんだから、心配いらないよ。」 希は、一週間ほど前から子供の頃の遠足の前日みたいに、ワクワク感を押さえきれずに、あれやこれやと俺に指示し続けている。 「ユータとマイクが楽しみにしてるって、毎日ラインが来るんだよ。 斗真にも早く会いたいって。」 「うん。俺も会いたいよ。 昔の希のこと、沢山聞かなきゃ。」 「うっ…」 「何動揺してんの?聞かれたら困るようなことでもあるの?」 「いや…別に…」 ごにょごにょ言い訳をする希を無視して 「ではチーフ、俺は今日直帰するので後はよろしくお願い致します。」 さっさと帰ってやった。 ふんっ。 いろいろやらかしてんのは分かってるんだよ。 まぁ、お互い様だから、そこら辺はあっちもオブラートに包むだろうけど。 希はきっとご機嫌取りに、ケーキか何か買って帰ると思う。 ちょっと涙目だったもんな。 お灸になっていいかもな。

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