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第591話

今年最後の朝礼の後、仕事…と言っても名ばかりで、身辺整理を済ませた者から、課内の大掃除に取り掛かり始めた。 俺も希も、前日までに全ての仕事を終わらせていたから、さっさと片付け始めた。 この調子なら予定通りに帰れるな。 お昼は希と一緒に何処かに食べに行こうか。 しばらく純粋な日本食ともお別れだし、定食でも食べに行こうかな。 希をチラリと見ると 「ヒルメシ イッショニ」 と口パクしてきた。 思うことは一緒かとうれしくなって、ニマニマしながら指で小さくOKサインを出した。 それを見た希の顔が瞬間崩れるのを見て、真っ赤になってしまった。 誰も見てないだろうな… と、ぽんぽんと肩を叩かれた。 「いいねぇ。社内恋愛、社内婚。 俺も早く帰って、嫁といちゃいちゃしよおーっと。」 「てっ、寺坂さんっ!」 三年先輩の寺坂さんが、あはは と笑いながらひらひら手を振り、パーテーションの向こうに消えた。 俺と希の関係に驚いただろうに、最終的にうちの課の面子は受け入れてくれた。 『ありがとうございました』の思いを込めて目礼すると、いつも見逃している所を拭いていった。 今年は要領が良かったのか、思いの外 早く片付いて、昼前に全て終了した。 みんな早く帰りたくてウズウズしている。 今年の業務終了と来年もよろしくとの挨拶を終え、口々に声を掛けて解散した。 「希!何処に行く?」 「がっつりと定食食べたいな。」 「じゃあ、いつもの?」 「うん!そこでいい?」 「もちろん!」 二人仲良く行きつけの店に入り、俺は生姜焼き定食、希はアジフライ定食を注文した。 この味との暫しの別れを惜しみながらご飯のお代わりをして満足すると、オーナーと奥さんに挨拶をして家路についた。

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