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第594話

「thank you,sir.」 ボーイの声とドアが閉まる音がして、希が背後から俺を抱きしめてきた。 その腕に手を絡ませて 「希…この部屋、凄過ぎないか? 贅沢だよ…」 「斗真?俺達、新婚旅行だぜ?honeymoonなんだよ? いいじゃないか。 このために必死で働いたんだから。」 「希…俺を甘やかし過ぎじゃないか?」 「嫁を甘やかして何が悪い? 斗真。お前は俺に一生甘やかされてろ。」 俺の真正面に回り込んだ希に唇を奪われた。 家を出る前に触れたきりの唇が、身体が、熱を帯びてくる。 口内をぐちゅぐちゅに掻き回されて、頭がクラクラする。 それでも長いフライトで汗をかいてる肌を綺麗にしたくて 「希…待って…シャワー…浴びさせて…」 必死で言葉を紡ぐと 「じゃあ、一緒にね。」 と、うれしそうに言われた。 抵抗する気も更々なくて、手を繋いでバスルームへと向かった。 途中、ぽいぽいっと服を脱がされ、お互い真っ裸で辿り着いた。 ガラスの仕切りのついたシャワールームに押し込まれ、少しぬるめのお湯を肩から掛けられると、心地良さでほっと吐息が漏れる。 もふもふの泡で身体を隈なく洗われて、湯を張った浴槽に押し込まれ…希にもたれかかった。 「…気持ちイイ…」 思わず声が漏れた。 背中から絡まる腕が、俺の心と身体の強張りを解いてくれる。 「同じ日の同じくらいの時間に着くなんて、得した気分。」 「その代わり、帰るときは一日損した気分になるけどな。」 くくっと笑う声が響く。 「さて、何食べようか。ここのレストランは何でも美味いそうだよ。」 「…うーん…シーフード?」 「オッケー、決まり。…そろそろ出ようか。」 ザバリと音を立て流れるお湯を気にする風もなく抱えられ、手を繋いだままバスルームを出た。

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