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第595話
頭から爪先まで、慈しむように丁寧に拭かれ、希の手が触れる所から、視線が這う部分から、押さえていた熱が じわりと再燃していく。
「…自分でするから…」
掠れる声に上書きするように
「俺の斗真を愛でたいだけだ。」
髪の毛にキスされて希のすることを許容する。
お互いの裸など、もう見慣れているくせに、“恥ずかしい”を通り越して“ほしい”と思うのは男の性だろうか。
勃ち上がりそうに反応する男の印をそっと隠しつつ
「今度は俺が拭いてやる。」
と、無理矢理座らせて、真新しいバスタオルで希の身体を包んだ。
「斗真、まだ」
言いかけた希の唇を塞いで
「お前、びしょ濡れじゃないか。風邪引くと大変だぞ?
俺は拭いてもらったから、次は希の番だ。
あとでドライヤーかけて。」
そう頼むと、やけに素直に俺に身を任せてきた。
引き締まった肉体。
着痩せするタチなのか、脱いだ時のギャップが半端ない。
この身体に…抱かれてるんだ…
邪な考えを振り払うように、目を逸らしながらそっと拭いてやる。
つと、俺の手に希が触れてきた。
「希?どうした?」
「斗真、すっげぇ、ヤラシイ顔してる…
このまま押し倒したい…」
「ばっ、ばかっ!お前だって…今はダメだぞ!
飯食いに行くんだからな!」
俺の手の甲に、ちゅ とキスした希は
「そう言えば斗真、『あっちでな』って言ってたっけ…」
「だっ、だから、それはっ」
「うん。わかってる。お腹満たしてからな。
何たって“新婚旅行”だから。無体なことはしない。
優しく満たしてしてやるから…」
砂を吐きそうな甘い台詞に、思わず赤面して仰け反り、乱暴にドライヤーを当ててやった。
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