597 / 1000
第597話
無駄に色気を振りまく希に翻弄されて、あとの料理の味なんて何処かへ吹っ飛びそうだった。
それでもデザートまで堪能して(希の分も食ってやった)、手を繋いで部屋へと戻ってきた。
「あー、美味かった。斗真、どうだった?」
「もう、腹一杯。もう一口も無理…」
「俺の分までデザートも食べるからだろ?
ほら、ゆっくりとここに座って。」
お腹を撫でながらソファーにもたれて、ついでに隣に座ってきた希にも、もたれかかる。
「…そんなに食い過ぎたら、動けないぞ。」
不意に耳元でささやかれて、飛び跳ねた。
「んなっ!?」
その言葉がナニを意味しているのかは明白。
「ばっ、ばかっ。少し休めば…」
顔が火照る。
身体も熱い。
そんな俺の反応を楽しむように、暴君は俺の腰を引き寄せた。
「そうやって焦らして、俺を煽るなんて。
…斗真、覚悟しとけよ。」
むうっ と膨れる俺に軽くキスをすると、希は くっくっと笑いながら俺の頭を撫で、そのまま自分の肩にくっ付けた。
たったそれだけで『愛されてる』と感じる。
希にとったら何気ない行動なんだろうけど。
やることなすこと、イケメン過ぎるよ、希。
黙って何か言いたげな俺に気付いたのか、希の指が俺の髪の毛にじゃれるようにクルクルと巻き付く。
「揶揄った訳じゃない。
斗真のことが愛おしくてかわいくて…
本当に新婚旅行に来てるんだと思ったら、遠足前の子供みたいにうれしくて。
斗真。俺、本当にお前を愛してるんだ。」
反則。
レッドカード。
何でそんなに男前なんだよ。
希、ズルい。
無言で希に抱き着くと、それ以上の力で抱きとめられた。
ともだちにシェアしよう!

