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第598話

とくとくと、少し早打ちの、規則正しい心臓の音を目を瞑って聞いていた。 俺…緊張してるんだけど、希も? 今から始まろうとする甘い時間を思うと、どうしても心臓が猛ダッシュをした後のようにバクバクしてきて、身体が内側から火照り、手の平にじわりと汗をかいてしまう。 「斗真…」 甘い声と体温が近付いてきた。 顎を取られ目を閉じると、唇を奪われた。 唇を合わせたまま、お互いのネクタイを解き、千切れそうな勢いでシャツを脱がせ合い、目の前に晒された赤い乳首を摘まれた。 びくりと跳ねる身体を抱きとめられ、ゆっくりと離れていく唇を銀の糸が繋ぎ、やがてふつりと切れた。 「斗真…愛してる…俺から二度と離れるな。」 命令形の愛の言葉に 「希こそ…二度と俺から離れるな。」 と、命令形で返答する。 瞳を合わせて、ふっ と声にならない笑いをかわすと、身体が宙に浮いた。 逞しい男の首に腕を絡め、横抱きにされてベッドへ連れて行かれる。 雄の芳香が鼻を擽る。 仰向けになった身体に、のしかかられて身動きができない。 「のぞ」 名前を呼びかけた唇は愛おしげに塞がれ、両手で身体を弄られる。 ゾクゾクと甘い痺れが全身を這い、ぶるりと震えた。 ちゅ ちゅく 喉元を舐められた後、鎖骨から順番にキス…いや、これは跡をつけている… あぁ…また所有のシルシを残してるんだな… 快楽に沈んでいく頭で、ぼんやりとそう思いながら、胸元に吸い付く希の頭を無意識に撫でていた。 希はキスマークを残しながらも、俺自身への愛撫を忘れてはいなかった。 「…斗真…何度もイくと辛いから、根元押さえるぞ。」 何処から取り出したのか、透明なリングを取り出した。 「…何?それ…」 不安になって尋ねた。

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