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第603話

纏わり付く駄犬の相手を適当にしながら、ルームサービスで軽めの朝食を済ませると 『ランチを一緒に』 という親友のリクエストに応えるべく、待ち合わせ場所に向かった。 街中も案内してくれるそうだ。 日本と良く似た気候で、今日はとても穏やかな気温で過ごしやすいらしい。 一体どんな人達なんだろう。 希が“親友”と言うくらいだから、話しやすい人達だとは思うんだけど。 「斗真?」 口数の少なくなった俺を心配したのか、希に呼ばれた。 「大丈夫。ちょっと緊張してるだけだから。」 「気が置けない奴らだから、心配いらない。 優しくて何でも好きなこと言えるから、きっと斗真も仲良くなれる。」 そう言って頭を撫でる希はうれしそうで。 そうだよな。 何年振りかで会える親友だもんな。 俺に『会いたい』と言ってくれる、まだ見ぬ人達へ思いを馳せた。 「「ノーゾーミィ!」」 「ユータ!マイク!」 希に飛びつくようにハグをする二人。 それを両手を広げて迎える希。 …俺は完全にアウェイで…一人ポツンと三人が抱き合う様を眺めていた。 暫くして、俺の存在を思い出した希が 「斗真!こっち来て!」 「トーマ!初めまして!あぁ…君にずっと会いたかったんだ…」 「トーマ、会えてうれしいよ!結婚おめでとう!」 「斗真です。初めまして!俺も会えてうれしいです!」 口々に挨拶され、ハグされて、握手をし背中をバシバシ叩かれる。 屈託のない笑顔と優しい雰囲気。 この人達は…裏表のない人達だ… 一頻り、大歓迎を受けた後、マイクが言った。 「ノゾミのハニーはシャイでキュートだな。」 …シャイは認めるけど『キュート』はちょっと… 一瞬眉間にきゅっと皺が寄る。 いや、我慢我慢。 日本人は実年齢より幼く見えるから…

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