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第604話

俺の態度を気にする風でもなく、ユータが 「ランチまでの腹ごなしに案内するよ!」 と歩き出した。 どうやら、思い出の場所に連れて行ってくれるようだった。 マイクが俺に色々と説明してくれる。 「俺達と仲の良かった先生が、まだ高校に残っててさ、校内に入っていいって特別に許可をくれたから、まずそこに行こうよ。 ノゾミがよく授業を抜けては一人で勉強してたお気に入りの場所もあるから。」 「何だ…希、フケてたのか…不良じゃん。」 「…つまんない授業の時だけだよ。 あの頃は必死で勉強してたから…」 ケータが「早く早く」と俺達の背中を押して、車に押し込んできた。 「トーマ、俺達はノゾミが日本から引越してきた時からの付き合いなんだ。」 マイクが話し始めた。 「俺達はすぐにノゾミと仲良くなった。 俺とケータは幼馴染で…その頃からお互いに恋愛感情があったんだ。 そんな俺達のことをノゾミは差別せずに、普通に接して応援してくれてた。 ハンサムで頭が良くて、人当たりのいいノゾミは皆んなの憧れでさ。 よく告白されてたけど、誰とも深く付き合わなかった。 理由は…トーマ、わかるよね?」 マイクがウインクした。 希を見ると、俺の肩を抱いたまま、じっと見つめている。 俺?俺のことを思っていたから? ユータが続ける。 「だから、俺達のことも理解してくれて、トーマに対する自分の思いも俺達にだけは打ち明けてくれてた。 君達が結ばれたと聞いた時は、本当に、本当に…うれしかったんだよ。」 助手席のマイクが頷きながら、そっと目尻を拭った。 「さ、着いたよ!ノゾミ、懐かしいだろ!」

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