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第607話

「希…ごめん。 そして…俺を思ってくれて追いかけて来てくれて、結婚してくれて、ありがとう。」 希は、そっと涙を拭ってくれて、頬と唇に優しくキスをした。 「斗真。俺を忘れないでいてくれてありがとう。 必ず、必ず大切にするから。 愛してるよ。」 そう言って、また唇にキスをした。 「…さあ、とっても気遣いの素晴らしい三人の元に戻ろうか。」 希は手を繋ぐと、笑いながらドアに手を掛けた。 俺はもう一度、振り返ってあの席に (希を癒してくれてありがとう) と、心の中でお礼を言うと、希に手を取られ前につんのめりながら、微笑んで俺達を待つ三人の所へ連れ出された。 何事もなかったかのように歩みを進める三人に感謝しながら後をついて行くと、今度は食堂に行き着いた。 「ここでランチも良いんだけど、違う所に連れて行きたいから…コーヒーでいい?」 「もちろん!任せるよ。」 「へぇ…安くて豪華なメニューだね… これは学生は助かるし、大喜びだろ?」 「そうなんだ。俺はAランチ、ノゾミとマイクはBランチをよく頼んでたな。 先生はこの“本日のスペシャル ランチ” 流石に大人で太っ腹だって思ってたんだ。 だって、三ドルもお高いんだぜ。」 「俺達にとっては、三ドルは貴重だったよな。 それで他の物も食べれたんだから。」 コーヒーを飲みながら、昔話から現在の話まで一頻り花が咲く。 そのうち、学生達で混み始めた。 「あぁ…もう昼時だな…先生、お時間取って下さってありがとうございました。」 ユータが深々とお辞儀をするのにつられて、みんなが口々にお礼を言いながら頭を下げる。 「日本式の“お辞儀”だね。 名残惜しいが…みんな、身体に気を付けて元気でやりなさい。 トーマ…ノゾミは手がかかるだろうが、仲良くね。」

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