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第608話

まるで本当のおじいちゃんみたいに、優しい声音でハグしてくれる先生を そっと抱きしめ返して 「俺の方が手がかかるので、希の方が大変です。」 と言うと、顔をくしゃくしゃにして笑われた。 ユータ達ともハグして、いつまでも手を振って見送ってくれる先生に、大きく手を振って学校を後にした。 「…すっごい素敵な先生だな。 卒業して何年も経ってるのに、生徒のこと覚えてるなんて…」 「うん。一番人気の先生だったからね。 今も多分そうだと思う。 バカなことも沢山やったけど、ユータとマイク、ベン先生がいたから、楽しかったよ。」 「ノゾミ、トーマ!チープだけど とびっきり美味いもん食べさせてやるからな。」 運転席のユータが声を掛けてくる。 「おっ、それは楽しみだよ。 そう思って朝は軽めにしたから。」 そうこうしているうちに、駐車スペースに停車したのは…マーケット? 「ここのクラムチャウダーとロブスターロールが美味いんだよ。」 「うわぁ…賑やかだなぁ…ははっ、土産物も売ってる! え…見たことない魚!?」 はしゃぐ俺の後を番犬みたいに希がついてくる。 寄り道しながら辿り着く頃には、目当ての店には行列ができていた。 「スピーディだから、すぐに順番が来るよ。」 マイクが教えてくれる。 先頭の人が両手に持っているのは…器から零れ落ちそうなたっぷりのロブスター!? 「腹の虫が鳴ってる…」 「うわぁ…楽しみ!ユータ、マイク、腹が減って倒れそうだよ。」 マイクの言った通り、案外早く順番が来て、ユータが 「おねーさん、彼ら日本から来たんだ。 オマケしてよ!」 と強請ると、ウインクしながら金髪美人が 「特別よ!」 なんて言いながら、四人ともボリューミィな上に更に上乗せしてくれた。 「サンキュー!」 落とさないようにゆっくりとテーブルについた。

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