609 / 1000

第609話

あまりの美味しさに四人とも無言で(かぶ)り付く。 俺と希は顔を見合わせ、ユータとマイクに親指を立て『美味い』をアピールした。 彼らも親指を立て笑顔のまま食べ続け、しばらくしてみんながクラムチャウダーを飲み干した。 誰からともなく口々に絶賛する。 「美味かったー!」 「満足!」 「もう、腹一杯!」 「どっちも美味いっ!」 「喜んでもらえて良かったよ、な、ユータ。」 「うん!昼はジャンクっぽいけど、夜はね…ん?誰だろ…ジェニファー?」 流行りの音楽が微かに鳴っている。 一度切れてはまた掛かってくる。それが数回続いた。 慌てて無音にしたユータが、 「無視…ってか、シツコイ。 低レベルの音量なんだけど、マナーモードにしとけば良かった… …うわぁ…すげぇ着歴。 ストーカーかよ。」 覗き込んだマイクが 「うわぁ…引くわ…どうしたんだろう。」 「…ジェニファーって、ユータの従姉妹の?」 「そう。後で掛けるよ。」 「そんな件数、異常だよ。何かあったんじゃないか? すぐ掛け直せば?」 希の提案に、流石にユータも心配になったのか、頷いて掛け始めた。 「ジェニファー?何?どうした?」 『どうしたじゃないわよ! ノゾミ!ノゾミが来てるんですって!? 結婚したってホント!? その相手、私達にも会わせてよっ!』 「…何で…」 『私達の情報網ナメるんじゃないわよ! …パトリシアが大騒ぎよ。 このままじゃ収まらないわ…どうするの?』 捲し立てるジェニファーの声は、マイク音声にしなくても丸聞こえだ。 「パトリシア…面倒だな… 完全なプライベートなんだ。 邪魔しないでくれる?」 『何よ、その言い草。 とにかく18時にリバーサイドホテルに来て! みんな待ってるから。 絶対よ! じゃあね!』

ともだちにシェアしよう!