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第610話

ため息をついて、ユータが携帯をマナーモードにしてポケットに入れた。 「…掛けなきゃ良かった…」 ユータだけでなく、マイクと希までもが苦虫を潰したような顔をしている。 「…どうしたんだ? 希のためにせっかく集まってくれるんだろ? 俺は…ホテルで待ってるから、希、行っておいでよ。」 「違うんだよ、トーマ。 みんなに会うのが嫌なんじゃないんだ。」 ユータが眉間に皺を寄せて言った。 「…問題は『パトリシア』なんだよ。 ノゾミにご執心で、断っても断っても言い寄ってきてさ。 ノゾミの他にも、いろんな男に粉かけて相手にされず振られては、逆恨みでその交際相手に嫌がらせをするような奴なんだ。 言うのも憚られるくらいのエグいことやってる。 被害届は山程出るのに、それでも捕まらない。 父親が議員でさ、握り潰すんだ。 それを盾にして昔から やりたい放題の嫌な女なんだよ。 俺達も何とか尻尾を捕まえようと、被害者の協力を仰いでるんだが、中々… ジェニファーはそいつのパシリにされてて…歯向かうと何されるかわからないから、今でも言いなりで… マズイな…何でバレたんだろう…」 「…何か企んでるに違いない。 トーマがターゲットになる可能性がある。 …帰国するまでhoneymoonどころの騒ぎじゃなくなっちまう…」 「チッ…アホくせぇ… 一人でホテルに置いとくのも心配だし…兄貴ん家に連れて行ってもいいんだけど、巻き込むのもな…いろいろ詮索されるのも… …斗真、連れて行くから、絶対俺の側を離れるんじゃないぞ。」 「そんな大袈裟な…」 「トーマ、大袈裟じゃないんだ! 俺もユータもガードするから、絶対にノゾミの側から離れるんじゃないぞ。いいね?」 「…オッケー…」

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