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第612話
指定されたリバーサイドホテルへ到着した。
流石に人気のホテルだと聞いたが。
スーツケースを持った宿泊客とぶつかりそうになりながらすれ違う。
チェックインの時間と相まって大勢の外国人で賑わっていた。
待合のソファーに座っていた男が突然立ち上がり
「ユータ!マイク!こっち!
…ノゾミ!!!久し振り!元気だったか!?」
小走りでやってきたかと思うと、希にいきなりハグしてきた…うん…ハグとキスの文化だよな…こっちじゃ当たり前の光景だよ…
それでも、ちりりと胸に小さな焦げが付いたような気がした。
「ジョン!?見ての通りだよ。
お前も相変わらず元気そうだな!」
希は全く気にする風もなく、バシバシ背中を叩き合っている。
「ほぼ全員集まってるぞ!
ところで、君のハニーは…へえっ…イケメンじゃん!おめでとう!」
俺に気付くと、ヒューっと口笛を吹いたジョンは満面の笑みでハグしてきた。
瞬間ぞわりと鳥肌が立った。
ユータとマイクにされた時には何も嫌悪感はなかったのに。
多分、俺は…少なくともこの男には歓迎されていない。
「おい!俺の斗真に触るなよ!」
べりりとジョンから引き離され、希の体温と匂いに包まれ、ほっと息をついた。
思わず、胸に回された腕をぎゅっと掴んでいた。
「あははっ!溺愛してるんだな。
みんなお待ちかねだよ。さ、行こう!」
ジョンの後に続きながら
「斗真、絶対に俺から離れるなよ。」
ユータとマイクも
「トーマ、俺達もいるから。」
とそれぞれにこっそりとささやかれた。
無言で頷きながらも、何となく嫌な予感がしてならなかった。
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