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第613話

案内されたのは…見るからにパーティー会場といったドアの前。 中からガヤガヤと、笑い声や話し声が漏れ聞こえてくる。 ぷるりと身震いした俺の手を希がぎゅっと握ってくれた。 じわりと伝わってくる温もり。 ガチャ 「おーい!ノゾミ達が着いたぞー!」 ジョンの一声で一瞬その場が静まり返った。 何だ、これ。 まさか希に会うためだけにこれだけの人数が集まってるのか? 男女合わせて百人くらいいるだろうか。 予想した以上の人数の多さに圧倒された。 興味津々の視線の波に晒された後、わっ と取り囲まれた。 ノゾミ!元気だった? やだぁ、相変わらずのイケメンっぷり! ノゾミ、今日本だって? なぁ、結婚したってホント? あぁ、彼か?おめでとう! 早く紹介してくれよ! ノゾミ、俺のこと覚えてる? 芸能人の取り巻きってこんな感じなんだろうな… 飛び交う言葉と数えきれないハグの嵐に、繋いでいた指が離れてしまった。 希は希で。 俺は俺で揉みくちゃにされ。 俺の周りには見知らぬ顔、顔、顔。 物珍しげにガン見され、やたら親しげに肩を叩かれ。 ユータとマイクからも引き離されてしまっていた。 マズい。 離れるなと言われていたのに。 この雰囲気は…ヤバい。 「希っ!」 希と俺の周りには、それぞれ幾重にも人が重なり、名を呼ぶ声は聞こえない。 突然、ぐいっと手を引っ張られ、輪の中から連れ出されてしまった。 訝しがる声が後ろで聞こえる。 誰? …ジョン?? 何故? 戸惑う間も無くドアの外に連れ出されてしまった。 バタン あの喧騒がドアの外まで響いている。

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