615 / 1000

第615話

side:希 揉みくちゃにされて、斗真の指が離れた。 「斗真っ!」 四方八方から俺の近況や斗真のことを問う声が怒涛の如く押し寄せてくる。 「ちょっと!みんな、待って! ちょっと退いてくれ!」 二重三重に取り巻かれ、斗真との距離がどんどん遠くなる。 マズい。 この状況はヤバい。 そうだ! ユータとマイクは!? 「ユータっ!マイクっ!!」 彼らを呼ぶ声も掻き消される。 「ちょっと、みんな待ってくれ! 斗真が!俺の斗真が! おい!落ち着けって!おいっ! ちょっと離れてくれってば!!」 俺の必死な様子に、やっと輪が解けてきた。 「斗真!」 人混みを掻き分けて見回すと、斗真を取り囲んでいた場所が空いている。 慌ててその場所に走って行き、何人かで固まって話している奴に問い質した。 「おいっ!斗真はっ??斗真知らないかっ!?」 「え?さっきまでそこに…あれ?いないな…」 「ノゾミーっ!大丈夫かっ? …あーーっ、本当にもうっ! みんないくら懐かしいからって… あれ?トーマは?トーマ何処?」 「斗真がいない…俺に黙って何処に行ったんだろう…まさか…」 ざっと辺りを見回しても、斗真らしき姿が見えない。 ぞわっと嫌な悪寒が背中を駆け抜けた。 何処かに連れ去られた? 「ノゾミ…マズいぞ…ジェニファー呼んでくる!」 ユータが駆け出した。 「ハーイ!ノゾミ!お久し振り。元気そうね。 …結婚、したんですって? おめでとうございます。 で?その愛しいハニーはどこ? ご挨拶したいんだけど。」 パトリシアだ… 取り巻きを引き連れて笑っている。 クスクスクス 何かある。絶対に。コイツら、斗真に何かしやがった。 握った拳に力が入る。 マイクが睨みつけるが、彼女らは一向意に介さない。

ともだちにシェアしよう!