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第616話
ワザと煽るように言い放つ。
「みんなに囲まれて引き離されちゃってさ、今探してるんだ。
見つけたら紹介するよ。
何たって俺の大切な伴侶だからね。」
キャァー っと黄色い声があがる。
「あら、そうなの。
でも、見当たらないなら…逃げちゃったんじゃない?
ノゾミの隣に並ぶには不釣り合い過ぎて。」
「あははっ。それは逆だよ。
斗真は最高過ぎて俺が霞んじゃうんだよね。
何たって恋して恋し焦がれた男 と結ばれたんだ。
俺はこれ以上ない程の幸せを噛み締めてるんだ。
じゃあ、俺は斗真を探してくるから。
マイク、行こう。」
瞬時に醜く歪んだ女の顔を横目に、くるりと背中を向けそれ以上の会話を拒絶した。
小声で
「マイク…マジでヤバいかも。早く探さないと…」
「うん。ざっと見た限りではこの会場の中にはいない。
何処かに連れ出されたかもしれない。」
と、そこへ
「ノゾミ!マイク!」
ユータが息を切らして走ってきた。
「ジェニファーを問い詰めた。
パトリシアの命令で
『トーマを攫って二度と世間に顔負けのできないようなビデオを撮って晒し者にして、ノゾミと別れさせてやる。』
って。
もう、これは完全に犯罪だ。
応援を要請したから、まもなくここもネズミ一匹逃げることができなくなるよ。
でも、早く見つけないと。
ここは俺が仕切るから、マイクはフロントで防犯カメラのチェックを頼む。
今度こそ首根っこひっ捕まえてやる。
…ところで、ジョンは?
アイツだけ姿が見えないんだが…」
「そういえば、アイツもノゾミを狙ってたな…
まさかアイツ、パトリシアと組んでトーマを…
ノゾミ、フロントに行くぞ!
ユータ、後を頼む!」
駆け出すマイクの後を追いかけて、会場を飛び出した。
斗真…斗真っ!!!!!
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