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第617話

エレベーターに飛び乗ると 「ノゾミ、絶対にトーマを助けるから。」 力強く言われて泣きそうになった。 「…斗真は… 横恋慕した男に襲われたことがあるんだ。 クソっ…俺が手を離してしまったから…」 思わずダンッ っと壁を叩いた。 ぐらりと緩い衝撃があった。 「…そうだ!GPS…」 慌てて携帯を取り出して画面を操作する。 …斗真の携帯はこのホテルで点滅をしていた。 「マイク…これが正しければ、斗真はまだこのホテルの中にいる!」 「オッケー。 まずあの階とエレベーターのチェックをしよう。 俺に任せて。」 頼もしい友の笑顔に、ついに涙が滲んできた。 黙って俺の肩を叩いたマイクは、一目散にフロントへ駆け込んだ。 「FBIです。捜査の協力をお願いします。 日本人の成人男性が誘拐されました。 つきましては、ビデオの提供をお願いします。」 身分証明書を見せ、堂々と宣言するマイク。 ドラマのワンシーンのようだった。 そこへ、十人程のガタイのいい精悍な顔つきの男達がやってきた。 「マイク!待たせたな。会場は何処だ?」 「三階!ユータが仕切ってる!」 「オーケー。トーマス、手筈通りに。 支配人は?…あぁ、FBIです。ご協力をよろしく。 おい!ビデオ班!こっち頼む。 フロントの面談は…ジェーンとミック、頼んだよ。」 無駄な動きのない男達は、わらわらとそれぞれの持ち場に散って行った。 俺は祈るような気持ちでそれを見つめていたが、マイクと一緒に急いでビデオの側に寄って行った。 「マイク、時間は?」 「18:00から18:15くらいだと思うんだ。」 「オーケー。」 食い入るように画面を見つめる。 「おっ、これかっ!?」 そこには、斗真を壁に押し付けるジョンと、逃げようと抵抗する斗真が映っていた。 「斗真っ!…」

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