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第618話

そして、ジョンは何か白い物で斗真の口を塞ぐと、がっくりと力の抜けた斗真を抱え、引き摺り出した… 全身の血が煮えたぐり、その後一気に血の気が引いた。 階数表示は十五を示していた。 「顧客名簿を出してくれ!」 名簿と、対応したフロント係の証言で、一室に絞られた。 やはり偽名でチェックインしてあった。 この筆跡は…間違いなくジョンのものだった。 「さぁ、突撃するぞ。準備はいいか?」 「オーケー!」 「いつでもどうぞ。」 「ボス、早くゴーサインを!」 「俺も!俺も行かせて下さいっ!」 みんなが一斉に俺を見た。 「斗真が…俺の大切な伴侶が危険な目に遭ってるんです! すぐ側にいてやりたい…だから、お願いしますっ!」 「俺が一緒にいますから!お願いしますっ!」 マイクも頭を下げてくれた。 「…分かった。でも、危険だから離れているように。 マイク、いいね?」 「了解!ありがとうございます!」 エレベーターで行く俺達と、非常階段で待ち伏せする者と。 気が付くと、人数が増えていた。 隠れた汚職と虚構にまみれた議員親子を捕らえる綻びになると踏んでいるのだろうか。 普通、ほぼクロの…いち日本人の誘拐事件にFBIがここまで用意周到に関与するだろうか? 時折、小さな無線の声が漏れ聞こえてくる。 どうやら会場の参加者の身分チェックと同時に、時間帯のアリバイを確認しているようだ。 …まさか、俺達が“囮”に? そんな、バカな。 ふと、隣の親友の顔色を盗み見た。 眉間に皺を寄せ、上昇する階数表示を見つめている。 視線を下にやると、握った拳は微かに震えていた。 マイク? お前達を…信じていいんだよな? 心臓が爆発しそうだ。 苦しい。 斗真…頼む、無事でいてくれ…

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