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第619話
1506号室のドア前では…
捜査員達が無言で扉の両サイドにスタンバイする。
正面で銃を構える者もいる。
リーダーがそっとカードキーを入れた。
それを合図に雪崩れ込むと同時に
「動くな!FBIだ!」
マイクの制止を振り切って俺も中に飛び込んだ。
「斗真っ!!!!!」
ベッドの中央には…両手首を括られ、口に詰め物をされた斗真と、上半身裸で彼の上に馬乗りになったジョンが目に飛び込んできた。
斗真のシャツは引き千切られ、上半身が見え隠れし、下半身は全て剥ぎ取られていた。
突然の乱入者達に銃口を突きつけられ、ジョンは身動きもできず両手を上げてフリーズしていた。
「ジョン、貴様ぁーーーっ!!!!!」
捜査官の間を瞬時に潜り抜け、斗真に馬乗りになっているジョンの横っ面を渾身の力で殴り飛ばした。
ぐしゃ「ぐえっ」
嫌な音と手に残る感触。
血を吹いてベッドの下に転がり落ちたジョンを完全無視して、斗真を抱きしめた。
「斗真っ!斗真っ!!」
ありったけの力で抱きしめる。
んっ…んくっ…ぐ…
あっ!
慌てて口から詰め物を引き摺り出し、なかなか外れない両手の拘束にイラついていると、横からサバイバルナイフが差し出され、プツッと切られた。
やっと自由になり大きく息を吐いた斗真に、俺のジャケットを被せると思い切り抱きしめた。
「斗真…斗真…怖い目に遭わせてごめん…
斗真…斗真……」
「…希…………」
たったひと言の掠れた小さな声。
口元には血が滲み、頬が赤く腫れていた。
ぶるぶると震える身体を撫で摩り、俺の腕の中に閉じ込めた。
ごめん、ごめん、斗真。
俺が手を離したせいで。
ボストン に来たせいで、こんな目に遭わせてしまって。
ごめん、ごめんな、斗真。
ごめん、ごめん。
斗真が俺の胸元をぎゅっと握りしめてくる。
その手はまだ震えていた。
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