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第622話

俺を一人待合室に残し、斗真に付き添うミカと、運転していた年配のポールが診察室へ消えた。 俺にとっては酷く長い時間だった。 あの場面がまざまざと脳裏に再生される。 絶望的に光を失っていた斗真の瞳。 俺がつけた所有の印が見え隠れしていた肌。 剥ぎ取られて剥き出しになっていた下半身… 。 許せない。 ジョンもパトリシアも…そして俺自身も。 アイツら…この手で地獄に堕としてやりたい。 俺も共に破滅しても構わない。 矢田の時は未遂だった。 でも、今回は… 俺の斗真が穢された。俺のせいで。 ただでされトラウマになっているあいつの心を土足で踏みにじられた。 斗真は…大丈夫だろうか。 どんなに怖かったんだろう。 異国の地で見知らぬ奴に襲われて。 俺を許してくれるのだろうか。 守ってやれなかった俺のことを。 こんなことなら連れて行かなければ良かった。 斗真…俺の斗真… ごめん、守ってやれなくて、ごめん。 ひたすらに後悔と懺悔と憎悪が渦巻く。 ガチャリ 慌てて立ち上がると…出てきたのはポールだった。 俺に座るように促し、横に腰掛けると 「君達にとって、不幸な出来事だったね。 後で説明があると思うけど、心配で堪らないだろうから先に伝えておくね。 殴打による両頬の腫れ、手首の皮下出血。 肛門周囲の擦過傷…これはローションのチューブの挿入によるものらしい。 正に事に及ばんとした時に、我々が突入したから… 『』よ。 それより心が傷付いている。 君しかフォローできない。」 優しく励ますように肩を叩かれた。 間もなく、斗真がミカに寄りかかるようにして出てきた。 まだ青い顔をしている。 「斗真…」 「希…」 俺を見て、ふっと微笑む斗真。 急いで駆け寄り、その身体を受け止めた。

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