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第627話

びっくりして、彼らの顔を交互に見つめてしまった。 優しく頷く彼らに、斗真が口を開いた。 「俺…アイツと初めて会ってハグした時、ユータやマイクに全く感じなかった嫌悪感があって。 …もっと気を付けておけば良かったんだ。 …シャツを破かれて、下半身丸出しにされて…挿入はされなかったけど、希に付けられたキスマークを触られて… …尻の穴に、何か突っ込まれて。 気持ち悪くて堪らなかった。 …俺はもう、汚れてしまったから、希の側にいられない。 そう思った。」 「今は?今でもそう思ってる?」 「…今でも…やっぱり、その気持ちが消えない。 希のことを愛していて、側にずっといたいのに。 こうやって、側にいてくれるのに。 …辛い。 希が優しくしてくれるのも。 今は…辛い。」 斗真は、それでも俺の手を握りしめてきた。 俺もそっと握り返す。 その手の甲に、冷たい物がぽとり、ぽとりと落ちてくる。 俺はただ、肩を引き寄せ、抱きしめてやるしかなかった。 その後も、思い出したようにぽつりぽつりと話す斗真を急かす訳でも、誘導する訳でもなく、痛みを共有するような空間の中で、俺はひたすらに斗真を抱きしめていた。 ミシェルは時折、ひと言ふた言、言葉を挟みながら、斗真の言葉を待っていた。 「ね、私、トーマと二人で話したいんだけど、いい?」 ミシェルの言葉に、斗真は一瞬戸惑うようなそぶりを見せたが 「オーケー」 と頷くと、自ら俺の手を離した。 去っていく温もりに、俺の方が落ち着かなくて 「じゃあ、後で」 とおでこにキスをすると、斗真は擽ったそうに首をすくめた。 ダニエルが 「では、ノゾミはこっちに。 君に伝えたいことがあるんだ。」 と言い、立ち上がった。

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