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第633話
斗真が『どうしても』と、マイクを部屋に招き入れた。
マイクは、斗真の負担になりはしないかと躊躇していたが、その意思を尊重してくれた。
「マイク、世話を掛けて申し訳なかった。
いろいろとありがとう。」
「トーマ、何言ってんだよ!
『守ってやる』って大口叩いてたのに、こんなことになって…ごめん。」
斗真は、頭を下げ続けるマイクにそっと近付くと
「いや、君達のせいじゃないんだ。
謝らないで。」
と しっかりした口調で答え、マイクの肩を叩き、また俺の横に座り直すと、ジャケットの裾をきゅっと握ってきた。
その仕草で『必要とされている』と確信した俺は、その手を包み込み、斗真の腰を抱き寄せた。
斗真は…俺を拒否することはなかった。
マイクは、その後の大捕物の様子を話してくれた。
「元々半年程前から、別件でアイツらをマークしてたんだ。
薬物で。
今日の昼頃、証拠が完全に揃ったからと、仲間達がこのホテルに詰めてたそうだ。
俺達は非番だったから、逮捕の日時は知らされてなかったんだけど。
そしたら、トーマの誘拐と重なって…
ある意味、運が良かった。
俺とユータだけでは、あれだけ早い時間に助けられなかったかもしれない。
トーマ、俺達が付いていながら、怖い思いをさせて悪かった。」
「だから!マイク達のせいじゃないって!
俺は…俺は、大丈夫。
…希が、希が俺の側にいてくれるから…」
「斗真…」
「あんな事があって…今の俺に、希はもう相応しくないと思った。
でも…
俺は希なしではもう生きていけないんだよ。
俺から希を取ってしまったら、俺は…
なぁ、希…こんな、こんな俺でもいいのか?
側にいても…いいのか?」
消え入りそうな声で、震えながら斗真が言った。
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