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第642話

斗真は黙って俺を見上げた。 「嫌か?…嫌ならいいんだ。」 シャワーヘッドを受け取ろうとしたのに、斗真は首を振り、それを一旦フックへ掛けた。 斗真の背中に当たった水飛沫(しぶき)が、跳ね返り踊っている。 斗真は片手にボディソープの泡を盛り上げると、それごと両手で俺自身を包み込んだ。 その手の動きのしなやかさに目を奪われて、言葉もなく見続ける。 ぬくぬくと緩やかな指使いで擦られ、欲を吐き出しそうになるのを必死で堪えた。 洗うだけではない…いつもの斗真の愛撫。 触る順番も、擦り上げる強さもいつもと同じ… ダメだ…これ以上は… 昂りかけた快楽を無理矢理引き剥がし、俺は斗真の頭を撫でて言った。 「ありがとう。気持ち良かった。 無理強いしてごめん。」 すると斗真は、黙って俺の身体にお湯を流し、すっかり泡を流してしまった。 キュッ とコックを捻る音に気付き、一緒にバスタブに浸かろうと斗真の手を取ったその時、斗真が俺の前に跪いた。 「斗真?」 斗真は俺の手をそっとどけると、両手で俺自身を包み込み、舌を這わせ始めた。 「っ…斗真?どうしたんだ?」 俺の問いかけには答えず、先端にキスをしてカリ首の周囲を舌先でなぞる。 それをはむはむと唇で挟み込んで外し、また挟み込んで外し、と繰り返していくうちに、綺麗に洗われた鈴口から ぶわりと愛液が滲み出てきていた。 一旦口を外した斗真が顔を上げ、真剣な眼差しで問いかけてきた。 「…希…感じてくれてるのか? 俺で…こんな俺で、欲情してくれるのか?」 俺は斗真の目の高さまでしゃがみ込み、頬を両手で包み込むと、真っ直ぐに見つめて言った。 「“お前”でないと感じない。 “お前”しか俺を雄にできない。 斗真…愛してる。」

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