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第645話

息苦しさに斗真が俺の肩を叩く。 正気に戻った俺は、斗真の唇から離れた。 はぁはぁとお互いの荒い息が、至近距離で震える。 「…ごめん、がっついて…」 斗真は、ふるふると首を振った。 「…違う…俺が…俺がキス…したから。」 俺は斗真の髪を優しく撫でると 「うれしかったんだ。 斗真からキスしてくれて。 舞い上がったんだよ。うれし過ぎて。 なぁ…激しくしないから、もう一度キス…してもいい?」 斗真は、ぱちぱちと瞬きすると、くすくす笑い出した。 「そんなこと…一々了解取らなきゃならないのか?」 俺は鼻先にキスすると、斗真を抱き上げた。 「うわあっ!」 斗真を抱きかかえ、ずんずんとベッドルームへ歩いて行き、その身体をそっと横たえた。 「斗真…何もしないから…たくさんキスして、抱き合って眠ろう。 お前の温もりを俺にくれよ。」 「…抱かなくて…いいのか?」 「抱きたいに決まってるよ。 …怖くないのか?それに…怪我してる。」 「…希だから…希だから、何をされてもいいんだ。」 「でもお前、傷…痛いだろ?」 「そんなこと気にせずに…希のものにしろよっ! 『お前は俺のものだ』って、身体に刻みつけてくれよっ!」 半泣きで叫んだ斗真の唇に容赦なく食らいついた。 じゅる じゅっ じゅる 滑った音が絶え間なく続く。 唾液を送り戻ってきたそれを飲み込み、舌の根元から絡め合って、口の周りはすぐにベタベタになる。 そこを舐め取っては、舌先を突っ込み口内を嬲りまくる。 キスだけで…気持ちが高ぶり、斗真の身体を撫で摩り、順番に口付けを落としていく。 一つ一つにその場所の意味する言葉を込めて。 言葉はいらなかった。 求めて求められる。 ただ、それだけでよかった。

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