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第653話

揺さ振り声を掛けて、名前を呼び続けた。 ヤバい。トンでる。 気を失う程、抱き潰してしまった… 身体を摩り覚醒を促す。 程なく、斗真がゆっくりと目を開けた。 「斗真!ごめん、大丈夫か?」 次第に焦点の合っていく目を見つめる。 その瞳の奥に俺が映っていた。 「…希…」 「うん。大丈夫?」 「…うん…希が、奥まで…来てくれた…」 「うん。俺しか知らない所へな…無茶してごめん。 斗真、ありがとう。愛してるよ。」 ふっ と微笑むと、斗真はまたゆっくりと目を閉じてしまった。 規則正しい呼吸を確認すると、斗真を寝かせて後始末をする。 あんな奥まで出してしまって、大丈夫なんだろうか… 傷は痛まないのだろうか。 欲望のまま、やってしまったことをあれこれ考えても仕方がない。 それにしても あの気持ち良さは別格だった。 体力のある斗真がこうなるんだ、余程の負担が掛かっているはず。 1ミリも動かず静かに眠る斗真の唇にキスをして、身体を清め傷跡に薬を塗ってやった。 そしてシャワーを浴びようと、俺も重い身体を動かしてバスルームへ向かった。 斗真は、横たえたその時の姿のまま寝入っている。 微かに上下する胸の動きだけが、斗真が生きていることを教えてくれる。 その横にそっと滑り込むと、胸の中に掻き抱いた。 それでも斗真は目を覚まさない。 「…斗真…」 おでこにキスをして、愛おしいひとの名を呼んでみる。 「斗真、愛してる。俺から離れないで。」 もう一度キスをして目を閉じた。 二人の鼓動が共鳴し合う。 触れ合う場所から、温もりが浸透していく。 大切な俺のもの。 斗真は俺のものだ。 斗真の温もりを感じながら、いつしか俺も睡魔の中に落ちて行った。

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