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第656話

身体は素直に反応するのに…と心の中でボヤきつつ 「今日は何処にも行かずに、ここでゆっくりしようか。」 「でも…マイク達との約束は?」 「斗真の体調が一番だから。 これっきり会えない訳ではないし。 『今度は俺達が、桜が咲く頃に日本に行くぞっ!』 って大騒ぎだったからね。」 「…希だって、彼らの家に行くの楽しみにしてたんだろ? …俺は…大丈夫。 外に出れば気も紛れると思うし。 せっかくここまで来たのに、勿体ないよ。」 「本当に?無理してない?」 斗真はふるふると首を横に振り、俺の目を見つめると 「大丈夫。」 と微笑んだ。 その瞳の強さも顔色も、心配ないように感じた。 「…分かった。じゃあ、予定の時間より少し遅めにしてもらってお邪魔するとしようか。」 「うん。早く連絡してあげてよ。 他の予定入れちゃってるかもしれないから。」 斗真の頭を撫で軽めのキスをすると、携帯を取り出した。 「…あ…ユータ?…うん、ありがとう。 大丈夫。 ……うん、うん。 でさ、予定通りお邪魔したいんだけど。 うん、斗真も大丈夫って…… 時間は一時間遅らせて… うん。そう。。 マイクは?OK? …OK!じゃあ、また後で。」 斗真は布団に包まったまま、じっと俺達の会話を聞いていた。 改めて顔を見ると、少し揺れる瞳に胸が痛んだ。 さっきはあんなこと言っていたが、俺のために無理をしてるのではないか? 「…斗真」 「そうと決まれば、朝は軽く食べよう! ランチはマイクのお手製だろ? …何食べさせてくれるのかな…」 俺が言い掛けた言葉を制して、斗真は努めて明るい声を発している。 ベッドに乗り上げ、斗真を布団ごと抱きしめた。 「希?」 「…何無理してるんだよ…自分の身体が一番だろっ! …何で…何で自分を大切にしないんだ!? 俺のことは気にしなくていいんだってば。」 「…無理はしてない。大丈夫だから。」

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