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第657話

俺は斗真の頬を両手で挟むと 「『大丈夫』って言ってる時は! 俺のために無理して付き合うことはないんだ。 それなのに…お前ときたら、自分のことは後回しで、変に俺達に気を遣って… それに気付かない自分が情けないよ。 ごめんな、斗真…」 斗真は俺の手にそっと自分の手を添えてきた。 「…俺が“そうしたい”んだから、いいじゃないか。 一日中ここにいても、動かないから腹は減らないし、お前はベタベタくっ付いてくるし…ふふっ…それも悪くはないけれど。 希…俺はお前が楽しんでくれたらそれでいいんだけど。 だって、マイク達も俺達を迎える準備してくれてたんだろ? それを反故にするのは俺的には嫌だな… お前の親友なら俺も大切にしたい。 あの二人とは俺もずっと付き合っていけそうだから。」 あぁ、もう! 俺は斗真をぎゅうぎゅうに抱きしめた。 お人好しで人情派で。 自分が傷付いていても他人のことを考える。 懐の深い、優しい俺の伴侶。 おまけに今の斗真は、心も身体も傷を負っているというのに。 そんな、他人のことなんて考える余裕なんてないだろうに。 「…斗真…ごめん…ありがとう…」 「『ごめん』は、なし!」 おでこをくっ付けて、くすくすと笑い合う。 「『ごめん』がダメなら『愛してる』」 「それなら許してやる。」 顔中にキスを繰り返す俺に、いい加減嫌になったのか、俺の顎をぐいっと押し退けると 「ほら!早く着替えて朝ご飯食べに行くぞ!」 呆れたように言って、クローゼットに行ってしまった。 残された俺は、暫し呆然と座り込んでいたが、慌てて斗真の後を追った。

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