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第658話

簡単に朝食を済ませて荷造りをして、約束の時間に間に合うようにチェックアウトした。 今日…本当は、また事情聴取が待っていたのだが、ミシェルやユータの口添えもあって、これ以上の、俺達への言質(げんち)取りはなくなった。 これは、斗真は勿論、俺にとっても願ってもないことだった。 斗真の事件は、アイツらを逮捕する証拠の一つにすぎず、気丈にも斗真はしっかりと事件の内容を克明に話したことで、それで良しと判断された。 ビデオが動かぬ証拠となったし、昨日、斗真が伝えたことが全てだから。 生傷に塩を塗りたくられるような思いはもう、させたくなかった。 タクシーは喧騒の街を抜けて、郊外へと走って行く。 「ホントに映画やドラマに出てきそうな場所なんだな…」 斗真が呟いた。 「うん。ホーム◯ローンとかだろ? 俺もそう思ってた。」 「クリスマスの頃にはイルミネーションでキラキラしてそうだな。」 そんな会話を交わしながら、車がやがて一軒の家の前で停まると、中からマイクが飛び出してきた。 「ノゾミ!トーマ!ようこそ!」 「急にごめんね。押し掛けて。」 「トーマ、何言ってんの!ウェルカムだよ。 さ、どうぞ!」 バルコニーがステキな大きな家にちょっとひるみながらも、荷物を持って玄関に入ると 「あ!うちは土足禁止にしてるんだよ。 ここで靴脱いで、スリッパに履き替えてね。」 「へぇ…珍しくない?」 「掃除がメンドーなだけだよ。」 「スッゲー広い…羨ましいな…」 「うちは二人だからこれでもこじんまりしてる方だよ。 お隣見てよ!うちの二倍はあるよ。」 窓際に手招きされて、ひょいっと窓から覗くと、確かに…見るからに半端ない大きさだった。 チラリと見えるのは、お約束のプールだ…

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