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第662話

片付けは四人でするから早い早い。 手慣れたユータとマイクの言う通りに、俺達もどんどん手を動かす。 あっという間に元通りにしてしまうと、促されてまたリビングへと戻っていく。 「なぁ、さっき二人で何の内緒話をしてたんだ?」 「え!?それは…内緒だよ!ね、マイク!」 「うん!俺とトーマだけの秘密だよ!」 「何だよー。俺にも内緒なのか?マイク。」 「いくらユータでも、話してやらないよー。」 ちょっとむくれる俺とユータ。 ドヤ顔の斗真とマイク。 クスクス笑いながら、マイクが斗真を連れてキッチンへと逃げた。 「ユータ…」 「どうした?」 「結局…どうなったんだ?」 「全ての事件に裏付けが取れて、とんでもない数の件数で起訴したよ。 メディアがこぞってスクープ合戦してる。 『史上最悪の極悪人』だってさ。 恐喝、傷害、強姦、監禁、名誉毀損、誘拐、器物破損、住居侵入、横領、文書偽造…そして殺人と死体遺棄…今朝の新聞の一面トップだった。 まぁ、よくもありとあらゆる犯罪に手を染めて…って呆れ果てて言葉にならないよ。 情状酌量があったとしても、生きてる間にはもう二度と外には出てこれない。 父親も逮捕された。議員も即 辞職したけどね。 トーマのことは絶対に外部に漏れないように伏せてあるから。 メディアに対しては、みんな口を噤んでいる。 被害者やその関係者がほとんどだからね。 安心してくれ。」 「…そうか。ありがとう… …一つ聞きたいことがあるんだけど。」 「何だ?」 「俺と斗真は…囮じゃなかったんだよな?」 俺はユータの目を見据えて言った。 ユータは、驚いたように暫く俺の目を見つめていたが、ふっと微笑むと 「そんなことある訳ないだろ? ノゾミ、酷いよ。俺達を疑うなんて。」 「そうだよな、ごめん。気を悪くしないで。 余りにもタイミングが良すぎて。」

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