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第663話

ユータが否定してくれて、正直ホッとしていた。 「疑って、ホントごめん。 でも、 …俺達の仲だから、はっきり聞いておきたかったんだ。 ありがとう、ユータ。 君達のお陰で、斗真を助けることができたんだ。感謝しても仕切れない。 本当に、本当にありがとう…」 「ノゾミ…俺達は、今回ほど“この職”に就いてて良かったって思ったことはない。 …役に立てて本当に良かった。 トーマも…元気そうに見えるけれど…フォローしてあげて。 って、俺が言わなくても…ごめん。」 俺は首を振ると、ユータをハグした。 ポンポンと優しく背中を叩かれ、ゆっくりとユータから離れた。 慈しむような瞳に、思わず泣きそうになった。 キッチンからは 「うわぁーっ!すごーい! こんなの作れるの!?売ってるやつみたいだ!」 なんて大喜びする斗真の声と二人の笑い声、コーヒーのいい香りがしてきた。 「ノゾミが愛してる限り、トーマは大丈夫。 自信を持って!」 「…そうだな。ありがとう。 俺から斗真を離すことは一生できないよ。 お前だってそうだろ?」 「あぁ。俺もマイクなしでは生きていけない。 お互いにいい伴侶に出会えて良かったな。」 学生時代みたいに腕を交互に打つけ合い、固く握手をする。 パタパタ ガチャガチャと、コーヒーの香りと共に斗真達がやって来た。 「何やってんの?」 「友情の確かめ合い。」 「何だ?それ。 なぁなぁ、これ凄いよ!マイクが作ったんだって! 俺きっと、ホールごと完食できると思う。」 「ダメだよ、トーマ!結構カロリーあるんだよ。 トーマには余分にカットしてあげるから、我慢しなよ。」 マイクに(たしな)められて、斗真がペロリと舌を出した。 「だって、美味しそうなんだもん。」 「俺の分も少し分けてやるから。」 やったー!と小躍りする斗真を見つめていると、ユータに 「甘っ」 と、小突かれた。

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