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第664話

マイクは、斗真の分を沢山切り分けてくれた。 斗真は喜び勇んで、早速ひと口… 「美味ーーいっ!マイク、最高!」 「ははっ!そんなに喜んでもらえるなんて… 誰かのために、何か地域に役立つことがしたくて、2年ほど前からボランティアで養護施設に慰問を始めたんだ。 最初は全く受け入れてもらえなかった。 一緒にご飯を作ったり、寝泊まりしたりして、段々と仲良くなって。 いいことばかりじゃない…裏切られたことも何度もあった。 綺麗ごとで済まされないこともあったよ。 でも、その中から俺達みたいになりたいって勉強する子が出てきて…嬉しかったなぁ。 ケーキはその時に教えてもらったんだ。 良かったらレシピ教えるよ。」 「俺でも出来る?」 「勿論!オーブンがあれば大丈夫さ。」 「やった!食べたい放題…」 「トーマ、食べ過ぎには注意してね。 毎日食べると、確実にウエイトが…」 「トレーニングするから大丈夫!」 斗真の笑顔がうれしい。連れて来て良かった。 俺の視線に気付いたのか 「何?顔にチョコレート付いてる?」 照れ隠しに 「いや…甘い物は別腹なんだな…って感心して見てただけ。」 むうっ と膨れる斗真を揶揄い、和やかに時は過ぎていった。 『誰かのために』…他人を思いやるこの二人らしい。 綺麗ごとで済まされない出来事。俺達には言えない苦労もあったんだろう。沢山傷付きもしたんだろう。 それもさらりと流して受け止めて。 …この二人には幸せになってほしい。 「…ノゾミ?どうした?」 「あ…お前達らしいなって思って。 優しくて正義感が強くて大らかで。 …俺、お前達が親友でいてくれて良かった。」 「ふんっ!今頃気付いたのかよ。遅っ!」 「ノゾミ…トーマも俺達の親友だよ。 ね?トーマ?」 俺の分のケーキを口一杯に頬張っていた斗真は、モゴモゴ言いながら首を振っていた。

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