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第670話
日付が変わる頃にお開きとなり、俺達はゲストルームのベッドに潜り込んだ。
身を寄せてくる斗真を抱きしめ、頭にキスをして撫でてやる。
みんな知ってて知らぬフリをしてくれていた。
あれだけ大ニュースになったんだ。
知らぬ訳はない。
忘れたい、思い出したくないことだったろうに、かつて同じ傷を負った義姉さんが、斗真のことを思って自分のことを伝えてくれた。
斗真は…どう受け止めたんだろうか。
ミシェル達が言っていたように、時間が解決してくれるだろうし、周りのフォローも絶対に必要だ。
特に恋人や伴侶がいる場合は尚更に。
幸せそうに見える人間でも、それぞれにいろんな傷を持ちながら、逞しく生きている。
その痛みや辛さがあるから、前を向いて進んで行けるのかもしれない。
傷ついた分、誰かに優しくできるのかもしれない。
中には、そうではない人間もいるけれど。
「…希…」
か細い声が俺を呼んだ。
「…ん、どうした?眠れない?」
抱きしめ直しておデコにキスをした。
「…俺、昨日ミシェル達と話して、さっき義姉さんが告白してくれて…
俺が、俺だけがこの世の終わりだと思ってたことが間違いだ…って、ちゃんと理解できた。
…頭では分かってたんだけど、どうしても受け止められなかった。
希、俺…平気だ。大丈夫。
時々思い出して泣くかもしれないけど、お前と一緒なら、笑って進んでいける。
……一生、側に…いて、愛してくれる?」
俺は斗真の目をしっかり見つめて言った。
「当たり前だ。俺には斗真しかいない。
結婚式で誓っただろ?『病める時も健やかな時も』
どんな時でも、俺はお前の側にいる。
一生愛するから、側にいてほしい。
斗真、愛してる。」
大きく見開いた斗真の目は、見る間に潤んできた。
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