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第674話
うざったそうな斗真を無視して後ろから抱き込んで頸に唇をくっ付ける。
ぴく と反応したが、斗真は俺を押し退けることもなく、腕を伸ばして頭を撫でてきた。
「…希、お前さぁ…じゃれ付く大型犬みたい。」
「かわいいだろ?もっと撫でろよ。」
「調子に乗るな。」
「従順で賢くて、ご主人様の言うことなら何でも聞くんだぜ?
わふわふん!」
「もーぅ、止めろよぉ。」
斗真は身を捩って逃げようとするが、俺は背後からのし掛かり鼻先を押し付ける。
「のーぞーみー…『待て』は?」
呆れたような口調にもめげずに、動きを止めぴったりとくっ付いたまま。
「…希…また明日な。くっ付いててもいいから…お休み。」
「…わふっ」
くすくす笑うと、斗真は俺の頭に手を置いてしばらく髪の毛を弄っていたが、次第にその指が動かなくなった。
何だ、寝ちまったのか。
つまんねーの。
仕方ないな、さっきあれだけ抱き潰したんだから。
お休み、斗真。
こめかみにキスをして、寝心地の良い体勢に調整してから目を瞑った。
規則正しい斗真の呼吸。
生きてる。
ちゃんと生きてる。
生きて、俺の側にいる。
良かった、斗真が生きてて。
自然と涙が溢れてきた。
伝う涙は斗真の襟首に吸い込まれていく。
絶対にどんなことがあっても、斗真を守る。
あんな目に二度と合わせない。
斗真が立ち直ろうとしてるんだ、俺がしっかり受け止めて支えてやらなきゃ。
俺の、俺の大切な斗真。
何度後悔の涙を流せば気がすむんだ、俺は。
いい加減に学習しろよ。
自分で自分のことが腹が立ってならない。
「…希。」
突然の柔らかな声音と頭を撫でる感触。
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