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第675話
突然、声を掛けられて驚いた俺は
「斗真?寝てたんじゃないの?」
と尋ねると、斗真はくるりと俺の方に向き直り、 くふん と笑って
「そんなに悲しそうに泣かれたら…起きちゃうよ。
希…もう、泣かなくていいよ。自分のこと責めないでよ。
俺は大丈夫だから。
ね?」
「斗真…」
「俺のこと、凄く思ってくれてるのも分かってる。
だから、だから、もう…んむっ」
愛おしくて堪らなくて唇に吸い付いた。
息苦しいのか、背中をどんどん叩かれる。
少し唇をずらして、ひゅうと喉が鳴り空気を吸い込むのを確認して、また食らいつく。
堪りかねた斗真に、思いっきり肩甲骨の辺りを殴られ怯んだ隙に、ぐいぐい痛いくらいに胸を突っ張られ 、亀のように首を伸ばしても唇には届かなくなった。
「…斗真ぁ…ちゅー…」
諦め切れずに唇を突き出すと
「バカタレ」
と冷めた目でひと言。
調子に乗り過ぎたことを反省しつつも、ぎゅっと抱きつくと、斗真はため息をつきながらも俺の頭を撫でて抱きしめ返してくれた。
「…なぁ、希…俺、お前が思う程に弱くないから。
そりゃあ、あんな事があってさ、この世の終わりだと思ったし、落ち込んだし…お前の側にいていいのかどうか迷って悩んだし。
このままいなくなってもいいか…なーんて事も考えた。
でも…
お前が俺のことを真剣に思って考えてくれて。
何よりも…俺を愛してくれてた。
そのことだけで、俺はまたお前の側で一生生きていけるって思えたんだ。
希、ありがとう。
そんなにくっ付いて“ちゅー”ばっかりしなくても、俺はもうどこにも行かないよ。
ふふっ。躾のなってない大型ワンコめ。」
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