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第676話
「躾のし直しかぁ…」
揶揄うように言われて、よーしよしよしと、ホントのワンコみたいに、ぐしゃぐしゃに撫でられて、一瞬このまま溺愛される犬でもいいかと思ったが、そうなったら斗真に愛の言葉もささやけないし、思いのまま愛を交わして抱くこともできないじゃないかと、慌ててそんな思いを追いやった。
斗真は暫く わしわし と俺を撫でまくっていたが、ふいに俺の頬を両手で挟むと
「希、ありがとう。愛してるよ。」
とささやいた。
じわりと滲む涙を親指でそっと拭われて、感情を持て余した俺は、ますます斗真を抱きしめた。
「…苦しいって…バカ希。」
とんとんと背中を叩く手の平の温もりに、涙が止まらない。
泣くのは…今夜で最後だ。
強く、強くならなきゃ。
強くなりたい。
俺たちに降りかかる全てのものから、お前を傷付けようとするあらゆるものから、俺の命を懸けて守ってやる。
肩を震わせて泣く俺を斗真は黙って抱きしめていてくれた。
大丈夫。
この温もりがあれば、どんなことでも大丈夫だ。
「希、愛してるよ。」
甘い言葉と優しいキス。
俺は頷きながら、その心地良さにゆったりと溺れていった。
ピリリリリリ
俺を包む温もりをしっかりとホールドしながら、腕を伸ばしアラームを止める。
「…ん…斗真ぁ…おはよ。」
「うん、希、おはよ。」
愛しい伴侶の温もりを感じて目覚める、幸せな朝。
ぐい と抱え込んでキス。
ちゅ ちゅ ちゅ
「もう!朝からシツコイ!」
むくれる斗真にもう一度キス。
「やーめーろー」
やだ、ばかっ なんて言いながらも、本気で拒絶しない斗真とのイチャイチャを楽しんでいた。
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