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第677話
身支度を整えて二人でキッチンに顔を出す頃には、もうドアの外に食欲を誘ういい匂いがしていた。
「義姉さん 、おはようございます。」
「おはようございます。」
「あら、もう起きちゃったの?おはよう!
ゆっくり眠れた?」
「ええ。お陰様で。
何か手伝うことないかと思って…」
「あら、ありがとう。でも、もうできちゃってるからね。気を遣わなくてもいいのよ。」
ふふん と笑うジェシカはとてもご機嫌で。
俺は斗真に聞こえないように、彼女にそっと小声で耳打ちした。
『ジェシカ、ごめん、シーツ汚しちゃってセットしてあった新しい物使っちゃったよ。』
『あはっ、いいのよ。
ゲストルームはゲストのための部屋だから。
どうぞご自由に使って愛し合って!』
あっはっはっ
ジェシカが、ばしん と俺の背中を叩いてお腹を抱えて笑い出した。
斗真はそれを訝しそうに見ていたが、何か察したのか次第に顔が赤くなっていった。
「希っ!」
掴み合いになりそうな俺たちの間に、まぁまぁと割って入ったジェシカは
「ゲストルームだからお気になさらず。
ねぇ、トーマ、お皿出すの手伝ってくれる?
ノゾミはテーブルを拭いて頂戴。」
少し涙目の斗真は、俺をギロリと睨 んだ後、頬を膨らませたままジェシカの言う通りに動き出した。
俺は、気になってチラチラ見ていた…
ジェシカが斗真に何か言うと、斗真は ぴきりと固まっていたが、またジェシカにバンバン肩を叩かれ、その後は、二人で大笑いしていた。
ホッとした。
ジェシカはその場の空気を変える天才だ。
斗真のことは彼女に任せよう。
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