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第678話

そうこうしているうちに、みんなが起きてきてキッチンに集まってきた。 「おはよー!ママ、お腹空いたー」 「ジェシカ!おはよう! おっ、ノゾミもトーマも早いじゃないか! ゆっくりできたのか?」 「ノゾミー、トーマ、おはよー!」 それぞれとハグしながら“おはよう”を繰り返す。 久しく忘れていた大家族の営み。 賑やかな食卓を囲んだ後は、これまた大騒ぎしながら手早く片付けた。 今日は俺達のために、仕事の兄貴を除いて一家で市内の観光スポットを巡ってくれるらしい。 と言ってもこの時期、公共の施設はどこも空いてないのだが。 …寒いから室内限定にしてもらった。 「斗真、無理しなくていいんだぞ。」 そっと尋ねると 「希、何言ってんの!? せっかく来たのに、楽しまないと! 子供達だって行く気満々だよ! ほら、支度して!」 と背中を押された。 コートに、携帯と財布を突っ込んで、同じくコート姿の斗真達が待つ玄関に下りていくと、子供達から『ノゾミ、遅いっ!』とブーイングを浴びた。 「そんなに待たせてないだろ?」 「何言ってんのよ! トーマはちゃんと支度して待っててくれてるのに、ノゾミは待たせちゃダメだよ! ダンナがリードしないでどうするんの? 愛想尽かされても知らないわよ!」 ミリヤの辛辣なひと言が飛んできた。 目を丸くして聞いていた斗真が吹き出した。 「ミリヤ…君って凄いね。」 お腹を抱え、ひぃひぃと声の出ない笑い方をする斗真を味方につけたミリヤのお小言が続いた。 「こらっミリヤっ!いい加減にしなさいっ!」 ラスボスのジェシカの登場で、俺はやっと解放された。 斗真はすっと俺に寄り添うと手をぎゅっと握ってきた。 「ごめん。分かってるから。」 俺も握り返して、隙を見せた斗真の頬にキスをした。

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