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第683話

ジェシカが自慢した通り、子供達の手際はとても良かった。 これなら一人暮らしをしても、飢えずにちゃんと自炊できる。 この年でこれだけできたら大したもんだ。 すげぇな…と感心しながら見ていると、斗真もそう思っていたのか、俺を見て頷いた。 こんなの、いいな。 何気ないことだけど、ちょっとしたことも共感できる。 斗真の頭をぽんぽんと撫でて、揚げたての唐揚げを一つ、口に放り込んだ。 「あー!ノゾミずるーい!」 「俺もー!」 「俺も食べたいっ!」 (かしま)しいスズメ達の口に、そして斗真の口にも、ジェシカが次々と熱々の唐揚げを入れていく。 「美味しーい!サイコー!」 「……………」 「美味いっ!」 「熱っ!でも美味い!」 もごもご言いながら、つまみ食いを楽しみ、料理が仕上がっていく。 兄貴…料理上手でムードメーカーで、気遣いのできる嫁をもらって良かったな。 何と言っても、人の痛みに共感できる人。 斗真に何かあったら相談に乗ってもらえるように、後で頼んでおこう。 やがてテーブルが豪勢な料理で埋め尽くされる頃、親父が顔を出した。 「おっ、今日もまた美味そうじゃないか。 今夜も酒が美味いなぁ。」 「おじいちゃん、毎日そうやって飲んでるじゃん! 飲み過ぎたら肝臓やられるよ!」 ドヤ顔のマイクとズッコける親父を見て、大爆笑した。 親父も、離婚という辛い思いをしたけれど、今はこうやって温かな家庭で暮らしてるんだな。 ジェシカや子供達のお陰だろう。 お腹空いた、早く食べたい、パパはまだ? なんて言葉が行き交っていると、噂の主人が帰って来た。 「ただいま!おっ、すげぇな! あー、お腹空いたぁ!」 みんなで食卓を囲む。 普通の、当たり前のことがこんなに幸せなんて。

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