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第684話
食べて飲んで笑って。
あっという間に皿は空っぽになっていく。
もうお腹一杯…と言う斗真の前に置かれたのは、あのドーナツの箱だ。
「じゃあ、これは明日にしようかしら。」
「えっ!?義姉さん !?
あの…コーヒー頼んでいいですか?」
「ふふっ。勿論よ、トーマ。
今準備するから待っててね。
ほら、あなた達、それ片付けるから下ろして頂戴ね。」
食器を片付けながら、ミリヤが揶揄う。
「トーマ、ドーナツは逃げたりしないわよ!」
顔を真っ赤にした斗真が、助けを求めるように俺を見た。
「俺もコーヒー飲みたいし、最後にちょっと甘い物食べたいからね。」
ウインクして返すと、首をすくめて恥ずかしそうに笑った。
甘い物は別腹。
斗真の別腹は何カ所あるのか…
明日空港でも何か買ってやるか。
手際よく片付けられたテーブルには、ドーナツの取り皿が置かれ、ミルを引き終わる音が止み、コーヒーのいい香りがしてきた。
斗真を見ると、ワクワクしながら待っている。
うっ、かわいい…
思わず抱きしめたくなるが、ぐっと堪える。
ダニエルが「どうぞ」とコーヒーを運んできてくれた。
できた息子だなぁ。兄貴はちっとも動きやしないのに。
いやに慣れた手つきに
「ダニエル、ウェイターのバイトでもしてるの?」
「うん!ノゾミ凄い!分かる?」
「だって、慣れた風だし、所作がとっても綺麗だから。」
「イェイ!褒めてもらったー!
駅の近くのレストランでウェイターしてるんだ。
ちょっと知れた高級店だから、俺も勉強になることばかりなんだ。」
「そうなんだ。凄くいいよ。カッコいい。」
ダニエルは、ちょっと照れながらも、みんなの分をセットし終えた。
ドーナツにパクつく斗真をこっそりと写メったことは内緒にしておこう。
待ち受け決定だ。
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